あいにいくよ

 まにまは大人しく静かな女の子だった。

 一緒にいると照れたように笑う、拗ねたり怒ったり笑ったり、いろんな顔を見ていたいと思った。

 ただ、一緒にいる時間が楽しくて、学校は面白おかしく、全てがちありにとっては順調だった。

 一本の電話がかかるまでは。

 何か、予感めいたものがしていた。

 コール音に着信の文字を見た時から。

 かすれた細い声、背後の怒鳴り声。

 心臓がうるさかった。

 会いたいと一言、すでに外は暗かった。

 何時だろうと時計を確認する暇さえなく、ただ気づけば走っていた。

 よくデートで使う公園のブランコに座る彼女の背中、近づけばすすり泣く声が聞こえた。

 彼女は言った。

 「平気だよ」

 理由を聞くまでもなく、上げた右目の腫れに動揺よりも先に怒りが沸き起こり、持っていた財布を地面にたたきつけていた。

 何も言わない彼女にさえ、怒りがわいた。

 「私はぜんぜん平気なの」

 その笑顔にちありは悲しくなった。

 何を諦めているのか、何に怒っているのかわからなかった。

 ただ、悲しかった。

 
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