あいにいくよ
再び前を向き、手を引きながら歩き出す。
「…その傷って…」
「…うん。少し痛いかな」
「…いつ…」
「電話の少し前かな。怒らせちゃって・私ったらバカだよね」
「まにまは何も悪くない!まにまは何一つ悪くない!悪いなんて思っちゃだめだ!」
食い気味に言えば、小さな笑い声がした。
「ちありは優しいね」
「…まにまの方が優しいよ、優しくてバカだ」
「うん。私は大馬鹿ね」
握った手に力がこもったのを自覚し、意図的に力を緩めた。
踏み出す一歩一歩が苦しかった。
交わす言葉の一つ一つが苦しかった。
「我慢なんか…しないで、いってよ」
「うん」
「頼りないかもしれないけど」
「そんなことないよ」
「話くらいは聞くから」
「うれしいな」