あいにいくよ

 穏やかな声に泣きたくなった。

 強がりだとわかるたびに、ふがいない自分の無力さが滲み出てくる様で、空しくなった。

 どれだけ運動が出来ても、彼女を引っ張って走りきることはできない。

 女の子にもてたって、彼女を笑顔にすることもできない。

 大きな悪意から、逃れる術のない無力な子供であった。

 自身の惨めさに苦しくなった。

 「…ちありがいれば、私は幸せだよ」

 強く、握られた。

 だから、祈った。

 彼女の幸せを。

 光り始めた星に、微かに見える月に。

 なんでもよかった、神様はいないと思っているが祈った。

 図々しい祈りでも聞いてくれるかも知れないと思った。

 すがれるならば、全てに惨めに縋ってみせた。

 ただ、ただ、彼女の幸せを。

 誰にも傷つけられることのないように。

 誰にも傷つけられないように。

 静かに、祈った。

 ただ、祈った。

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