地味子さんの恋愛事情
「はっ?」

思わず聞き返した私に、大河がトンと壁に手を当てた。

あっ、壁ドンか…って、違う違う!

「いや、な、何で…」

呟いた私に、大河が顔を覗き込んできた。

「まあ、いつかは桃ちゃんをヒロインにした小説を書いてみたいなって思ってたから。

今までは桃ちゃんをモデルにするのが恐れ多かったから避けてたんだよね」

大河はそう言うと、
「――ッ…」

私の頬に唇を落としてきた。

「ねえ、桃ちゃん」

耳元で大河が私の名前をささやくように呼んだ。

ビクッと、条件反射のように私の躰が震えた。
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