地味子さんの恋愛事情
「いただきまーす」

夕飯は私の大好物である親子丼である。

「たくさん作ったからたくさん食べてね」

ピンク色のエプロンをつけている大河が嬉しそうに言った。

大河のように男でピンク色が似合う人は私は見たことがなかった。

過去の交際人数が1人だけ――高校の時につきあい始めたけれど、大学進学を機に自然消滅してしまった彼氏である――だから、男を知らないと言うのも多少は関係しているのかも知れないけれど。

「たくさんはいらないわよ」

私はそう言い返すと、親子丼を口に入れた。

「今、みそ汁も用意するから」

大河は私に背中を見せると、みそ汁を温め始めた。
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