恋をしよう!
舞台のうえにスポットライトが照らされた。

そのスポットライトの中から現れたのは、オーバーオール姿の荻原だった。

彼女が登場したその瞬間、観客から歓声があがった。

「大丈夫か、荻原…」

あちこちからあがった歓声に不安になったが、荻原はそれに動じていないと言うようにドナを見事に演じていた。

普段から注目を浴びているから、これくらいは何のそのと言うところなのだろう。

しかも、母親は元女優である。

母親から受け継いだ血も荻原をそうさせているのかも知れないと、僕は思った。

それぞれの役を演じているクラスメイトたちと一緒に演技をし、ABBAのヒット曲を順番に歌って踊る荻原の姿に、観客はすっかり彼女のとりこになっていた。

僕との個人指導のせいかもあってか、荻原はよく声が出ていた。
< 247 / 438 >

この作品をシェア

pagetop