恋をしよう!
「大丈夫ですよ、変なことはしませんでしたから」

荻原はそう言うと、僕から離れた。

「どこ行くの?」

そう聞いた僕に、
「洗面所に行くだけですよ」

荻原は答えた。

「ちょっと待って、せめて何をしたのかは教えてくれ」

「だから、何にもしていませんってば」

荻原は肉食獣の笑顔を見せると、洗面所の方へと向かって行った。

変なこととか何もしていないとかって言ったけど、本当に僕は何をしたって言うんだ!?

「先生って、酔っ払うと普段とは想像もつかない姿になっちゃうんですね」

洗面所の前のドアで立ち止まったかと思ったら、荻原は呟くように言った。

「えっ?」

僕の声に荻原はフフンと勝ち誇ったように笑うと、洗面所のドアを開けて中へと入って行った。
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