恋をしよう!
もし古川が生徒で、僕が教師じゃなかったら、古川が理事長の甥っ子じゃなかったら…僕は迷わず、古川を殴っていたことだろう。

「彼女を盾にするなんて、やり方が卑怯じゃないか?」

せめてもの抵抗で言った僕に、
「卑怯?

俺は荻原先輩のためを思って言っているんですよ」

古川は“荻原先輩”を強調しながら言った。

「荻原先輩のためにも、別れてくれますよね?」

念を押すように聞いてきた古川に、
「わかった、別れるよ」

僕は言った。

古川はクスッと笑うと、
「じゃあ、今すぐに荻原先輩に別れを告げてください」
と、言った。

「はっ…?」

「口だけじゃ信用できませんのでね。

この場でウソをつくことくらい、簡単ですからね」

古川は数学準備室から出る気はないようだ。
< 344 / 438 >

この作品をシェア

pagetop