ノーティーアップル


「明日予定とかあるなら早く帰ったほうがいいんじゃない?彼氏も喧嘩した後に他の男と飲んでるなんて知ったら悲しむでしょ?」

我ながら紳士な対応。自分を褒めてあげたい。

そのはずがなぜかため息をつかれていた。

「私は凪くんがどうしたいか聞いてるの。きっかけは私が作ったし、選択肢も与えてる。男の人はそっから先リードしてよ」

「…え?」

思考より先に言葉が出てしまった。

こんな女性は初めてだ。

今までは相手の意向に添えるように極力努めてきた。
彼女がいた時には、本当にやさしくていい彼氏ねと彼女の友達に言われていたくらいなのに。

こんなに紳士な対応をとっても満足がいかないのか、この子は。

「何かあっても女の子のせいにしたがってるの、ずるいよ。たまには自分本位に決めてみたら?」

その言葉を聞いて何かが切れる音が聞こえた。

グラスに残ったビールを飲み干して、酔いに任せて言ってしまおうか。

「じゃあうちに来る?そのかわり半分は僕の責任だけど、もし断らないならもう半分は君の責任だよ。彼氏にばれた時には全部僕のせいにしてもいいけど、自分の中ではそのつもりでいてほしい」

ここ最近で一番の大胆さを見せてしまった。
バーテンダーの口角が少し上がったように思ったのは気のせいだろうか。

「おー言うね。いいじゃない。じゃあ連れてって」

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