ノーティーアップル
少し思考を落ち着かせて、何で今日はこんな飲み会を開こうなんて言い出したのか、永井に問い詰めようというところまでたどりついた。
連絡を入れようと思い携帯を取り出すと、先ほどのそっけない返事に対して、さらに可愛くない返信が返ってきていることに気づいた。
「へー、合コン?いい収穫があったら報告よろしく♡」
ズバリ当てられて返す言葉がなくなって、一度携帯を閉じた。
この人は僕の心の中でも見えるんじゃないかと思う時が時々ある。
あのバーの時だってそうだ。
英単語の意味が気になったら勝手に答え出すし、もっとお互いのことを知り会いたいと思ったときに帰るなんて言いだして僕の気を引く。
さっき違う女の子にキスをされたことなんてもうどうでもよくなっているほど、今自分の頭の中は山下りこでいっぱいだった。
…この感傷を癒してくれるような、甘いものがほしいな。
らしくなく、そんなことを思ってしまった。
考えるより先に体が先に動いた。
改札を抜けて、電車に乗る。
自宅の最寄り駅よりも一つ手前で降り、向かった先はいつしか彼女と行ったバーだった。