ノーティーアップル


重いガラスの扉を開けて迎え入れてくれるのは見覚えのある爽やかなバーテンダー。

前回来た時は余裕がなくて気がつかなかったけど、さりげなくジャズなんて流れていたんだ。


この曲は…枯葉だったかな。
いまの季節と僕の心境にぴったりな哀愁漂うメロディー。


「こんばんは。またいらっしゃってくれたんですね、ありがとうございます」

前と同じ黒革のスツールに腰掛けると、そんなことを言われたから少し恥ずかしくなった。

「覚えていてくれたんですね、ありがとうございます」

暖かい笑顔を返される。

「今日は何にされますか?」

…うーん、どうしようかな。

「フルーツ系の甘いカクテルでおすすめのやつを」

冗談めかして言ってみたら、バーテンダーもつられて笑っていた。

「かしこまりました。あのカクテルでよろしいですか?」

「はい、お願いします」

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