ノーティーアップル
July
あれは確か夏が始まろうとしている7月初めの土曜日。
それまでろくに話をしたことなんてなかった彼女を、偶然街で見かけてしまったのがそもそもの始まりだった。
こちらは飲み会帰りでそこそこ酔っ払ってはいたけど、同僚のプライベートに首を突っ込まない方がいいと思えるくらいの理性は残っていた。
平日よりも少し丈の短いタイトスカートを履いて、綺麗に巻かれた髪を跳ねさせながら歩いている彼女を見たら、たぶんデートの帰り道か何かなのはすぐ分かった。
前から美人だとは思っていたけど、女性って服と化粧でこんなに変わるんだなー…なんて思いながら目で追ってしまったのがいけなかったのだろうか。
次の瞬間彼女とバッチリ目が合ってしまった。
目をそらすのも失礼かと思い会釈をすると、彼女がこちらにやってくる。
早まる僕の心拍数。
うわー…こんなことならガムくらい噛んでおけばよかった。
そんなことを心の中でつぶやき終わったタイミングで、彼女が僕の目の前に到着した。