☆Friend&ship☆-妖精の探し人-

「お兄ちゃん達こいびとなのぉ?」

「…」

キングは嬉しそうに白衣をたなびかせセレンの顔を覗き込んだ。

「そらみろ、端から見れば完全にできっちゃってるんだよ?このリア充が♪」

「…ヘリオに失礼だと思うんだが」

「そお?奴は喜ぶと思うぜ」

「…違う、ヘリオは俺を見て手を繋ぎたい抱き合いたいなんて思わない。そこまでヘリオは可哀想な奴じゃない」

「そうかな?」

キングはクスクス笑いながらセレンに言った。

「長い船旅…冷たい船員の中で唯一優しく一々反応を微々たるものながら返してくれる美少年だぜ?全世界の少女が憧れるぞぉ」

「…そもそもそんな過酷な状況にヘリオをおいやったのはどこのどいつだ…」

「ヨーロッパ?そこ以外にドイツ知らないなぁ?」

「…キング、どんどんウザイ系の奴になっていってる」

「だから?」

セレンはスタスタ歩いて窓に近づきながら無表情にうつむく。


キングは心底愉快そうにヘラヘラしつつ、セレンを追い越し体を反転させた。

「最近さぁ、ヘリオが俺のこと嫌いみたいでさぁ?」

楽しげな口調に、セレンは黙った。

「しょっちゅうにらんでくるんだけど俺本気で嫌われた?セレン」

「…反抗期だろ」

「でました保護者はつげぇーん」

そんなこと聞いてるんじゃねーよとキングは笑ったまま言った。

「今俺が死んだら、あいつ悲しむかなー?」

今ならいいんじゃねーかって思ってるんだよセレン。

象みたいに墓場で死んでさぁ。

だれにも気づかれねーで一人で死んだら。

あいつ悲しむと思う?

セレンは足を止め、ヘラヘラしたままのキングを見据えた。

「絶対泣く」

端的にそういって、セレンは窓を一瞬見てはしごを手の中から出現させた。

はしごに足をかけるセレンに、キングはゆっくりと足元を見つめる。

「…じゃあ、いつなら良いんだよ」

独り言の筈の言葉の返事は、頭上から降ってきた。

「独りで死ぬな。絶対泣くから。どれだけかかってもお前を見つけようとするから」

ああ見えて、ちょっと病んでないか。

最近やつれて来てるんだよ。

セレンの声で告げられた言葉に、キングはニヤッとして二度血液が絡んだ咳をした。

「…お前と同じに」

キングは愉しげに笑って、壁にもたれかかった。


「優しくしてくれるのはお前だけだよ、セレン」

キングは笑って、空を仰いだ。

「お前の笑顔、見せてよ」

無表情に窓を拭いていた手は一瞬止まって。

何事もなかったかのように規則的に動いた。

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