☆Friend&ship☆-妖精の探し人-
「ったく、キースのやつめ…無理すんなって言ったのに…」
ぶっ倒れたキースを引きずりつつ応戦していると、突然ヘリオの視線の延長線上に大きな爆発があった。
「い!?」
上がった爆炎が辺りを巻き込み、周辺にいた敵を全滅させる。
その中心から現れた人影を見て、ヘリオは一人で歓声を上げた。
「セレン!」
「…」
広範囲に広がった氷の炎が一瞬で辺りを静寂に包む。
「無事か」
「良かった、お前死んだかと…」
「…俺はいいが、なんだその背後の死体の山は…死にぞこないが多すぎるだろ…」
「あーっと、やっぱお前がいないと駄目だわ俺ら。全滅必至だったぜ」
「あぁ…そうだな。全消去」
瞬間、氷付けの敵は一掃された。
「…さて、こいつら蘇生させるか」
「うん、俺ちょっと休んでる」
「超回復術(スーパーヒール)」
たちまち癒えた傷のあとを撫でながら、ヘリオはにっと笑った。
「お前がいなきゃ、俺達何にも出来ないや…セレン」
仰向けに倒れて、ヘリオは目を閉じた。
「そういやぁ、シルンは?」
「死んだ」
「ふぅん、死んだんだ…残念、いいやつだったのになー」
「…」
「ちょ、ちょいまち死んだ!?」
「…死の夢術使いがいたらしい、悲鳴が上がってすぐに体が腐っていった。魔法も間に合わなかった、あそこまで中身が破壊されてるとなると…」
「おい、どういうこと…」
「キングが暴走したんだと思ってたんだが、違うらしいな。まあ当然と言えばそうなんだが」
「キングはずっとここにいたよ、それに死の夢術って最高神の家系の奴しか使えないんじゃ…キングの兄弟一人しかいないはずだろ!?」
「…」
「だいたい、死の夢術使いは自分の能力に侵されて早死する!キングはお前の薬で持ちこたえてるけど長生きでも20が寿命だろ!?」
「…」
「それに、キングだってあの夢術は制御できない!あれを発動しながら一人の人間だけしか殺さないなんて無理だ!」
「…そうだ、だから俺は考えた」
ヘリオ、こうは考えられないか。
キングの兄弟はもう一人いた。
それが兄か弟か、姉か妹かは分からないが、とにかくお前の知らない兄弟がいた。
…不思議なことじゃないだろう、キングの兄や姉ならお前らが知らないのは最もだし、間だとしてもキングはずっと幽閉されてた。
一番下という可能性もある。
家出のあとに生まれたかも知れないし、物心つく前に生まれたかも知れないだろう。
気がつかなくても不思議じゃない。
そして、そいつは俺の薬と同じかそれ以上の薬を服用してるんだろう。
または特種か。
そして何らかの手段で力をコントロールできるようになった。
…俺の十字架然り、探せば結構ないこともないからな。
完全に解放する手段もあるにはある。
聞いたことがある…そういう本能的で爆発的な操作できない能力を自身に同化させる儀式があるんだ。
成功率は低いが、それをやったのかも知れない。
そいつが敵にいる。
「…ヘリオ、厄介だぞ」
夢術は対象は限られるが魔法以上になんでもありの能力だ。
「お前の気持ちも分かるが、これ以上隠せば冗談抜きで死ぬからな」
「…分かってるよ、お前が死ぬんなら解放するけど」
ヘリオは気絶したままの船員を見て呟いた。
「こいつらの死には、俺は動じないんだ」
ウィングが倒れたとき、心は揺らぐことすらしなかった。
キースを見ていても、面倒だとしか思えなかった。
シルンの死を聞いても、涙も出なかった。
「俺は悪魔なんだよ、セレン」
「…」
「人を人と見れない、俺は悪魔だ…!」
「…」
唇を噛みながら、ヘリオはそう笑った。
「そうは思わないけどな…俺は」
「…」
「悪魔なら何故、ヘリオ」
冷たく、静かなセレンはそれでも優しく、そっとヘリオを抱きしめた。
「泣いてるんだよ」
崩れ落ちたヘリオは、恐ろしいほど冷たいセレンを感じた。
「おい、セレ…」
「…」
「セレン、おいセレン!」
慌てて見下ろせば、うっすらとした微笑を浮かべ、セレンはこちらを見ていた。
「…ヘリ…オ…」
「おい、セレン、お前…どうして…」
「俺はもう死んでる…処置も間に合わないだろう…これは一時的なものだ…すぐにまた死体に戻る…シルンは俺がでてきた階段の下だ…拾ってくれ…」
「やだ、いやだセレン、いやだよ、何でお前まで…!」
「何故今も生きてるのかは知らないし分からないが…脈も呼吸もない、臓器も死んでる」
ヘリオは泣きながらセレンにすがりついた。
「俺も、俺も連れてってセレン。セレンの行くとこに…一緒に連れていってよセレン…」
微笑んで、ヘリオの呟いたその言葉に天使のような微笑を浮かべて、セレンはそっとヘリオの髪に触れた。
「ありがとう。さようなら、クラウン」
甘く呟かれた言葉の終わりかけに崩れ落ちたセレンは、幸せな微笑を浮かべていた。