☆Friend&ship☆-妖精の探し人-
そして新たに
船は、木の虚の中の水溜まりのような、そんな場所に浮かんでいた。
思ったより、2秒遅かった。
またゼロは痛めつけられると知りながら帰ってきたのだろう、その忠誠心は彼にとっても貴重だった。
「…」
「用件は分かっている。ゼロ。お前の忠誠心には感服だ。殺されると分かっていただろう?」
「…当然ながら」
「じゃあ、リトルは死んだのか」
「…」
黙って頷いたゼロの目には見間違えようもない大粒の涙が零れていた。
いつもなら機械のくせになくなと張り倒すところだが、まあ今日は見逃してやろうと思うほどには彼は人間だった。
リトルを可愛がっていたのは何もゼロだけではないが。
彼に一番近かったのはゼロだろう。
「此処はリトルのマンションの停泊所だ。できるだけ外出は控えるように伝えておいてくれゼロ。リトルは私が診察しよう」
「…」
「後で存分に悲しめ。今は指示だ。ゼロ」
「はい、了解しました」
こういうところは二人はとても似ている。
リトルの方が過剰だが、自分の価値を変に下に見る癖がある。
確かにゼロは要らないが、この処置はゼロの身を守るためでもあるのだが。
ゼロは気がつかないだろう。
一応ゼロはもう研究員ではない。
休む間もなく人体実験を誰より多く受けさせられた、その傷痕は酷く痛々しく。
憂さ晴らしという拷問を派手に受け続け。
それを平気なように振る舞うゼロは研究員ですら同情をよせるほどだった。
建前としてゼロはこちらを裏切った為、冷たい態度を取らざるをえない研究員達の身にもなればいいものを。
「…あの二人は変に馬鹿すぎる」
彼は呟いて、踵を返した。