☆Friend&ship☆-妖精の探し人-
次の日の早朝、沈んでいく月を眺めるヘリオの背後に忍び寄る影が。
ヘリオはかったるそうに振り向いて、首をかしげた。
「なんか用?お嬢さん」
セレンよりはいくらか明るい真っ赤な髪。
暗いベランダでもはっきりととは言わないまでも綺麗に見える原色のシアンとマゼンダの瞳。
スラリと伸びた長い脚をもて余すように組みつつ、ロメは悪戯に笑った。
「セレンくんの飼い主さん?」
「飼い主じゃねーよ、親友」
「ふぅん」
ロメは愉しげにヘリオを見つめた。
「何に使ってたの?ただの戦闘員?」
「使ってねーよ、だから。うるせーな、もう女はこれだから嫌なんだ」
「へー、女嫌いのそういうナルシストは嫌になるほど見てきたけど君は違うの?」
「…今は機嫌わりーの。ちょっとどっか行ってろよマジで。つか、何の用?」
「私は帰りなの、ゼロが廊下で寝ちゃったから。さすがに9徹は無理って言ったのに」
ロメは魅惑的に微笑んだが、ヘリオはまともな反応を返さなかった。
「…そうだ、ゼロ好きって本当かよ。趣味悪いな」
「いいでしょ?ゼロってイケメンだし。競争率何気に高いの知らないの?」
「あいつが?」
ヘリオは鼻で笑ったが、ロメは笑みを深くしながら頷いた。
「あれで顔までセレン君みたいなんだったら困る。まあ、セレン君も中々のパーフェクトボーイだけど」
「身近にセレンがいながらよくゼロに目が行ったなお前…」
「セレン君はタイプじゃないの」
「じゃあ何がタイプだよ、黒髪?隈?人相悪いやつ?不清潔?蛙?爬虫類?」
「身長。というか全部」
「…へえ、前半1+3つは置いといて後半2つを受け入れたか大した愛だなおい」
「それに、ゼロだって頑張ってるの。ちょっとくらい助けてあげたいと思うくらいには、ね」
「あのプランクトンが?両親ミジンコとアメーバだろあいつ」
その頃ゼロは訳の分からない悪夢に苦しんでいた。
「両親は天才よ?ここで一番だった」
「え?あいつ機械だろ?」
「うーんと、話していいかどうか分かんないけどヒントね。"機械少年”(カスタムボーイ)」
「?おい待てって!」
「ゼロにタオル渡してくる~♪」
「…いや、気絶してるんだろ?試合中のバスケ部レギュラーじゃないんだろ!?」
ヘリオは叫んだが、ロメはいなくなっていた。
「…」
魔界の夜は、まだ深く。
紅い夜が明けるのはそれでもあと5時間程だ。