☆Friend&ship☆-妖精の探し人-
「そういえばゼロって、どうして彼処を出たの?」
動き出す船の中で、キースが不意に呟いた。
「そうそう、良いところだったじゃん?」
ウィングに、ゼロは呟く。
「覚醒剤による能力補正に体がついて行かなくなったのと、L君が居なくなったからです。半ば夜逃げのごとく辞表を置いて真夜中に出ました」
ゼロはそういって、疲れたように笑った。
「まあ、前者は建前も同然ですが」
「え?でもゼロ、お前結構馴染んでたじゃんか」
「…スイム君、君の口調がもう答えを出しているような気がします」
明らかに他とは違うスイムの態度に、ゼロは溜め息を着いた。
「私になくなった居場所を与えてくれたのが彼でした。彼が地獄に囚われた日の翌日、私は研究所を去りました」
「地獄に囚われた?彼って、セレンが?何したの?」
悪いことしなさそうな顔してるのに、とキースが言った。
「…彼自身の価値がそうさせたんです。軽い罪を再犯防止を建前として重く裁き、その建前は種族でしたが、本当の目的は彼の頭脳です」
「え?ちょっと待って色々聞きたい」
「研究所派と王族派、つまり魔界派で争っているのはご存じですよね。その政治争いがそのまま彼の奪い合いに発展しているんです」
「…」
「彼は研究所と魔界で取り合いになっていました」
「…」
「その二者がL君一人を建前を並べ立てて奪い合いました、彼はあんな性格です。理不尽でも建前でも言われれば命令は聞きます」
彼を手に入れれば世界が掌握できるとすら言われていましたからと。
ゼロは溜め息をついた。
「彼が死んだと知られたら、魔界はどうなってしまうのでしょうか…」
人一人死んだら、1つの世界が崩れる。
その世界とバランスをとっていた2つの世界も崩れる。
「セレン…そんな人だったの…?」
「…本当にL君は、手のかかる子ですよ」
彼が死んでまで彼を奪い合う。
亡骸すら、計り知れない価値を持つ。
「本人の無自覚に頭を悩ませているところです、私達は」
ゼロは、疲れきった顔で言った。