☆Friend&ship☆-妖精の探し人-
「ねえ、ウィングさん」
キュッと丸まったアクアに、ウィングが応える。
「あの、私の羽根って…」
「今のセレン君に使った。イケメンだろ?」
「はい」
アクアはそういって、ヘラッと苦しげに笑った。
「…ウィングさん達は、セレンさんを助けたかっただけなんですね」
「ん」
「だから、私もう必要ないですよね?要らないですよね?だったらもう私…殺されちゃいますか?それとも、売られるんですか?私、どうなるんですか?」
アクアはそう呟いて、抑えたような涙声でそう聞いた。
ウィングはまた手を伸ばして、スプリングを弾ませベッドに飛び乗り、背中側からそっとアクアを抱き止めた。
「俺が頼んだげるよ。アクアちゃんはどーしてーの?」
ニコッと囁けば、アクアはしっかりと膝を抱え込んだまま呟いた。
「…私には、探してる人が二人いるんです」
「…」
「その人を、探しに行きたいです」
「どこにいんの?そいつは」
アクアはクスッと笑って、おかしそうに答えた。
「分かりません」
「名前は?」
「分かりません」
「顔は?」
「分かりません」
「身長は?」
「分かりません」
「服装は?」
「分かりません」
「声は?」
「分かりません」
絶句するウィングに、アクアはニコッと笑った。
「性別と瞳の色と髪色と種族も、一人は年齢も分かってます。二人がDeath-planetにいることも。一人を見つけたらもう一人が見つかることも」
「…」
「色んな星を渡り歩いてきて…もうちょっとなんです。きっと」
「…何で、そんなに頑張るんだよ?生きてるんだろうなそいつら!」
「分かりません。でも、生きてます。きっと見つかります。だから私を逃がしてください。お願いします。何でもしますから」
コテンと頭を垂れたアクアに、ウィングはもっと強くアクアを抱き締めた。
「なあ、アクアちゃん、その手がかり教えてくれよ。これでも一応魔界に住んでたし顔も広いよ」
これは嘘ではなかった。
まあ、住所不定で路上に数日寝泊まりしたのを居住と言わないなら、そして不動産屋限定の顔の広さであり、本当でもなかったが。
「そうなんですか!?」
ぱああっと輝いたアクアの瞳に、ウィングは幸せを感じた。
「二人っていうのは私がお兄ちゃんって呼んでた人とジュエル様って呼んでた人なんです」
「うん」
「お兄ちゃんは、私が三歳だったときに六歳だったので…たぶん今十七か十六か十五。Death-planetにいなかったら別なんですけど」
「おっけ、一人は年齢はそんくらいな」
「それで、二人とも種族は吸血鬼です」
「うんうんおっけ…っておい!吸血鬼!?」
「そうですよ」
「悪魔科吸血鬼!?あの悪名高い!?」
「他にいないですよ」
にこ、と笑ったアクアは、誇らしげにそういった。
「だから特にお兄ちゃんを早く見つけたいんです。ジュエル様も今流刑でここにいるんですけど…まあそれはいいですよね」
「…ん」
「性別は男、髪と瞳は共に綺麗な赤です。お兄ちゃんと最後に会ったのは三歳の時なので…あんまし覚えてないんですけど。ジュエル様はすっごく綺麗な方でした。二人とも優しいんです、すっごく」
「ごめん、俺にはわかんねーや…あ、そうだアクアちゃん!セレンに聞こうぜ。あいつ魔界出身だし天才だから多分全世界の戸籍と照らし合わせてくれるだろ!」
ウィングは急ぎセレンの元へ向かった。