☆Friend&ship☆-妖精の探し人-

「…出して」

「駄目」

「…」

さすがに足が痺れてきたセレンはうつむいたまま呟いたが、キングにあっさりと止められた。

「これにサインしてくれればいいんだけどねセレンちゃん?」

アイドルぼったくり事務所みたいな事になっているのだが、微笑と共に差し出されたそれにサインするわけにはいかなかった。


【上記の誓いを破った場合には、船長または誓約した本人以外でそれに代わる者に罰を受けさせること】


「…」

許されるものか。

「…あのさ、お前が破んなかったらいいんだからな?別に誰一人気がつかないし」

司法取引だ。

自白したら保釈金半額って言われるパターンだ。

駄目だ、乗っちゃ駄目だ。


セレンは無表情に耐えていた。

きっと船長がいつか飛び込んできてくれるであろうことを健気に信じて。

「…セレンちゃん?誰も気がつかねえよ、こんな法外取引」

「…嫌だ」

「じゃあたっぷり拷問受けてもらおっか?」

「…」

「船長に」

「契約違反だ」

だってまだサインしてないと抗議したが、キングは悪魔のような笑顔で優しくセレンに微笑みかけた。

「セレンちゃん?今この場で、君と俺と強いのはどっちかな?」

「…キング」

「じゃあ俺がここに船長引っ張ってきてもセレンちゃん文句言えないね?」

「…悪魔」

「死神だけど?」

セレンは一刻も早くヘリオに来てほしかった。

ヘリオの為にも。

「…」

「セーレンちゃん?女の子みたいに泣く?シクシクシクって泣いてみる?ヘリオ君助けてくれるかもよ?セレンちゃんお姫様だもんねぇ」

「…」

我慢だ、とセレンは自分に言い聞かせる。

ここで俺は男だなんて言ってみろ、それこそ相手の思う壺。

男の子なのに正座でこんなことされて恥ずかしくないの、とか言われるだけだ。

恥ずかしくないけど。

全然平気だけど。

でもキングの声には羞恥心を煽る何かがあるのだ。

拷問なんかでは絶対と言えるほどセレンは屈しない。

ましてや屈辱なんかで苦痛を感じる程セレンには自尊心がない。

プライド皆無だ。

しかし何故かキングから解放されたいと異常に強く思う自分がいるのだった。

「…」

もしかして、キングは天性の才能を持っているのだろうか、とセレンはチラと考えた。


キングには他人を屈服させる何かがあるのだろうか。

なんてたちの悪い才能だ…

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