☆Friend&ship☆-妖精の探し人-

「よう、アクアちゃん。初めまして」

「…」

アクアは、見知らぬ人に警戒して軽く会釈した。

「へぇ、子供の割に礼儀をわきまえてる子だな。なに、こんにちわだろ。こーんーにーちーわぁー」

馬鹿にしたように言ったキングに、アクアは顔をしかめる。

「子供じゃありません。もう13です」

「え、マジか。まあまだ子供だけどさ。童顔だねーアクアちゃん」

「…あなたは」

「ああ、悪いまだ名乗ってなかったか?俺はキング。心理臨床士」

「嘘つき」

「おい」

一瞬で否定されてしまったキングは、苦笑いを浮かべた。

「ま、人を見る目がありますね」


アクアのベッドに腰かけつつキングはさてとと前置きし、さっそく本題を切り出した。

「さて、今船長さんがちょーっとやばい感じだから俺が話すな」

「嫌です」

「なあ止めてくんないかなその意味のない拒否。お前結構セレンに似てんな」

「セレンさんに?」

「ああ。あいつも俺にちょっと冷たいかな。あーでも結構優しいけど」

「似てません」

アクアは俯いて暗い声でそう言った。

「…だって私は、奴隷にしてくれなんて冗談でもいえません」

「まぁ、な」

あいつ馬鹿なとこもあるしなーとキングは楽しそうな声で笑った。


「で、アクアちゃん。俺からの提案は三つある。一、このまま魔界に残る。二、俺らの船で一緒に暮らす。三、どっちも嫌な場合殺す。以上」

おすすめは二かな、と付け加えてキングは微笑んだ。

「わりぃけど逃がすわけにはいかねーの。船長がそう言ってるから」

「…」

「お前が望むんなら売ってやってもいいけど、やだろ。ま、たいていの奴は嫌だろうしな」

「はい」

「うんうん、お前はまともっぽくて安心した。うちの船キチガイばっかだからなぁ…あ、恐がるなよ?普段はたぶんいいやつだし…うん、個性的な王子様達とのシェアハウスだと思ってくれればいいよ」

「…」

「選択肢的にはそうだなぁ…自意識過剰チャラい系ナルシスト、地味だけど優しいお人よし、お子ちゃま系意味不金髪、謎多き自己評価過小美少年、あと俺かな」

「…あの、悪口私嫌いです」

「うんうんいい子だなお前」

キングはにこにこしながらそう言った。

「で、その涙腺は何?」


「生まれつきです」

アクアは、今にもこぼれそうな涙をたっぷりためながらそう言った。

「その敬語は?」

「生まれつきです」

「なわけあるか」

キングはそう言ってから、アクアをもう一度じっと見てからニヤッと笑った。

「…ふぅん、ほんとお前泣かせたいわ」

「…!!!」

「あ、ごめん冗談!!マジで泣くなよ!?セレンに殺される!!」

「…セレンさん乱暴しますか…?」

「いやしねえけど!比喩だよ比喩!!」

「セレンさん権力あるんですか…?」

「いやないない!!」

どんどん膨れ上がっていくセレンのイメージを全力でかき消しながらキングは思った。


面白いことになりそうだ、と。


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