☆Friend&ship☆-妖精の探し人-
「ゼロ!!」
「L君、ダメだろうそんなに走ったら。ちゃんと安静にしていなさい」
「だって、ブライドが!」
「大丈夫だよ、体に悪影響はない。あまり興奮するな」
珍しく取り乱した様子のセレンは部屋に駆けこむなりそう叫んだ。
カーテンの奥からはこの世の物とも思えない絶叫が聞こえてくる。
「でも、こんなに叫んでるのに!」
セレンは長い指でカーテンを指さしつつ叫ぶ。
「ジュエル君」
Nは優しくそう言って、セレンの肩を抱きつつソファに誘い座らせた。
「ジュエル君、落ち着きなさい」
「嫌です、だってゼロさんが、ブライドが…」
なおもカーテンに近づこうとするセレンに、Nは微笑みつつしっかりとソファにセレンを押し込む。
「いいね、ジュエル君?君が今すべきことはここで嘆いてることじゃないだろう」
「…はい」
「そうだよ、いいこだねジュエルく」
「ゼロさんの装置を何としても俺につけ直させます」
「本末転倒もいいところだなやめなさい」
変な義務感を潰しつつNは微笑を崩さずセレンの頭を撫でた。
「君がやるべきことはほかにあるだろう」
「…あ!」
セレンは顔を上げつつNの手を取る。
「俺の死亡事故を報じさせるんですね!」
「…もう報じられてる。だから君は本当に自分のことが絡むと無力だな」
だいたい、ゼロのあの鎖が今一気に作動しているのはそのせいなのだ。
メディアに流れたセレンの“死亡疑惑”。
研究所ではその噂を事実無根と全面的に否定。
しかし重病により意識不明の重体と会見で発表し、面会を拒否。
その頑なな態度が裏目に出たか、噂は派手な尾びれ背びれと共に高級住宅街を飛び回り、ゼロは抗議ともとれる心臓を縛る鎖で、ああしてずっと苦しんでいるのだ。
「他にも…もう少しひねったところだが…やることがあるんだよ、ジュエル君」
「…?」
Nは珍しい悪魔的な微笑みを浮かべつつ、セレンをそっと抱きしめた。
「演技は得意だね、ホセ君」
セレンはこてんと首をかしげつつぼそりとつぶやいた。
「俺に得意なことはありません」
「…そうだね、仕方がないから苦手なことに挑戦してくれよ、いいね」
セレンはこくんと頷いた。
「もちろんです、Nさん」