☆Friend&ship☆-妖精の探し人-
「ウィングさん、そっちの取っていただけますか?」
「ん、これ?」
「はい!ありがとうございます」
窓の外ではもうすでに魔界の長い夜が始まろうとしている。
血染めの夕焼けを背景に、アクアはにっこり笑った。
「いい夕焼けですね。これを見るのは久しぶりです」
「あ、そっか。アクアちゃんも悪魔だったよな」
「はい。変わり身の早さは先祖譲りです」
ころころ子犬のように笑ったアクアは、また本に目を落とした。
ウィングも向かいで腰を下ろし、数冊の物理学の参考書とノートを広げた。
「…」
不意に顔を上げると、長い睫毛がフルフル揺れているのが見える。
ウィングはついぼうっとして見つめてしまい、慌てて視線を戻す。
しかしどうしても集中できず、時々気が付かれないように視線を上げる。
頬杖をつきながら熱中しているアクアはなぜかウィングを引き付けて離さなかった。
「ふ、ふわぁぁぁぁ…」
「!」
アクアは章が終わったところで思いっきりあくびをした。
拍子に常に緩んでいる涙腺が限界を迎え号泣寸前まで崩壊した。
「あ、おい!?なんかあの…」
「大丈夫ですよ、私涙腺異常なんです」
ウィングが慌てたが、アクアはクスクス笑って涙目のまま言った。
「いや、ほっとけるかよ。とにかくそれ拭け」
弟にしていた時の癖がでて、ウィングはアクアの目元をハンカチでそっと押さえてやる。
アクアはおとなしくしていたが、ウィングはふと我に返って真っ赤になった。
「あ、ごめん俺…つい弟にしてた時の癖で…」
「えへへ、ウィングさんお優しいんですね」
アクアは気を悪くした風もなく、にっこり笑ってそう言った。