☆Friend&ship☆-妖精の探し人-
結局日が沈んでもずっと楽し気に笑いあっていた二人は、月が沈みかけてようやくまどろみ本を枕に眠ってしまった。
セレンは名前の通り夜はあまり眠たくならないので、2人をそっとソファに運び、毛布を掛ける。
読み散らかした本を片付けつつ、数冊貸出の申請をしたのは優しさなのか気まぐれなのか。
なんにしろここの本は一字一句違えず紙質まで全部頭に入っているという驚異の脳内図書館をもつセレンには貸出など必要ない。
一度読んだ本は完全に記憶しているのだ、行間さえも。
「…月が綺麗だ」
月だ月だと騒ぎ立てるへリオに、なんとかセレーネだけは食い止めようと必死に説得したのがもう大分前の話。
「…月…か」
幼いアクアの寝顔をチラと見据えて、セレンはまた呟いた。
確かに自分が月ならば、へリオは太陽だろう。
キースは太陽だろうか、温かい太陽。
キングは月だな、真っ白で冷たい月。
ウィングはどうだろう、太陽かもしれない、ただし冷たい太陽。
アクアは、彼女は月だろうか。
ただ美しい、可憐な月。
こんな紅い月とは違う、歌にでもなるような優しい月。
珍しくそんなどうでもいいことを考えて、セレンは溜息をついた。
らしくない、と。
おもむろに立ち上がって、セレンはへリオに会うことにした。
へリオはセレンにとっての、安定剤。
安心はしないが、緊張によってまぁ、安定はする。
じゃあ何で安心するんだといわれればそれも困るのだけれど。
「…綺麗な月だ」
再三呟きセレンは船へ向かった。
ゆっくりと歩いていこうか、それとも速足でいこうか。
珍しくそんなどうでもいいことを考えながら、セレンは歩いた。
「そうだ」
シルンの墓に、花でも手向けて来ようか。
彼女が好きだった、いくつかのペンダントと一緒に。