悲しみに、こんにちは

「ねえ、風邪ひいてない?」
ハル君の部屋に転がり込んだ私は
彼のベットで漫画を読む


「あれぐらいで、ひくわけないだろ」

切れ長目を細めてテレビ画面を見ながら、彼は言う

壁に掛けてあるジャケットからは雨の匂いが、微かにした

「ねえ、ガキ使、そんな面白い?」

「ガキ使じゃねえよ、すべらない話だ」


なんでこっちを見ないんだよ
ハル君のために
スカート3センチもいつもより短いんだぞ
ここに来るために、折ったんだぞ

ハル君は相変わらず
テレビを見てゲラゲラと笑ってる

特別かっこいいわけじゃないし、
特別頭がいいわけじゃない
ひょろりと痩せていて
背ばかり高い、その姿

姿勢だけは真っ直ぐで
私に全然優しくない。

あー嘘だ
本当はすっごく優しい

漫画なんて読んでないのよ
貴方に見て欲しいだけなのに


でも ハル君といるのは好きだから
貴方が笑ってくれるなら
私はいつだって貴方に付き合うよ


こうして私は時々オトナになる
そう、これはおそらく、《逃亡》なのだ

気持ちを伝える、その勇気さえなく
今日もハル君の幼なじみであり続ける
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