嘘から始まる恋だった
部長に送ったLINEの内容を思い出し頬が熱くなっているうちに会計が済んでいて、カフェを出たところでさらに私をからかう部長。
「麗奈にあんな積極的な面があるなんて思わなかったよ」
「…いえ、違うんです…昨日の友達が勝手に…」
熱くなるどころか茹だっている気がするぐらい、頬が蒸気している。
「…だと思った。麗奈にしたら砕けすぎていたもんな…」
クッ、クッククと笑い出す始末だ。
「もう、からかわないでください。わかってるのに性格悪いです」
頬を膨らます私の頬を突っつき
「怒るなよ。なんだか、麗奈だとからかいたくなるんだよな…」
えっ…
顔をあげる私を楽しそうに見ている部長
「でも、あれぐらい積極的な面がないと会長は騙せないから頑張って彼女役を演じてくれよ」
繋いでいる手と反対の手で、頭をポンポンとする部長。
「…はい…頑張ります」
「ほら、言っている先からそれはないだろう⁈」
今度は、私の鼻先を優しく摘む。
恋人らしい部長の仕草にときめいていく私。
それをごまかす為に
「もう、痛いじゃない。高貴の方こそ彼氏役演じきってよね」
突然、私の口から出た名前呼びに頬を赤らめる部長が、慌てて手のひらで顔を隠すように口元を覆う。
「……それ、反則だわ。名前なんて呼ばれ慣れてるのにな…なんでだ⁈」
ブツブツと大きな独り言をいう部長。
「でも、いいかも…よし、麗奈…これから俺を高貴って呼べよ」
えっ…えぇー
ムリムリと顔を横に振る私に向かって、意地悪く微笑む部長。
「ほら、こ、う、きって言ってみ…」
どんどん距離が近づいてきて、顔を覗き込む男。
その整った顔を間近で見て平気でいられる人がいるのだろうか?
真っ赤になって命令されるまま素直に従ってしまう。
「…こ…う……き」
「続けて読んで…」
「……こ、高貴」
2人の間で、白くなった息が飛び交う。
「うん…いい。……その声と顔で他の男の名前呼んだらペナルティだから覚えておいて…」
訳のわからない罰則だけど、至近距離から解放されたくて頷いていた。
「よし…それじゃ、ご飯食べに行こう」
私と繋いでいる手を引き歩き出す部長。
「麗奈は何か食べたい物ある?」
「……今日は、家で一人鍋するつもりだったんですけど…」
「おっ、いいね。よし…それなら買い足して一緒に食べよう。一度、麗奈の部屋の安全性を調べておかないと思っていたし…決定」