嘘から始まる恋だった
そして…今日全てに肩をつける。
大和建設創立記念パーティー
祖父はこの日に婚約者を披露し結婚に向けて後戻りできないようにするつもりでいるはずだ。
案の定、あの女が振り袖を着てあからさまに近寄ってくる。
うっとしい
俺は、麗奈が来ているか心配でならなかった。
彼女のことだから、来ない可能性もある。
上手く連れ出すと言っていた常盤社長を信じていない訳じゃないが、この目で見るまで気が気じゃない。
遠くで、彼女を見つけた時の安堵感と言ったらない。
彼女の振り袖姿に脳から足のつま先にまで甘く疼く痺れみたいなものが一気に走った。
あまりの美しさに、今すぐ隠して閉じてしまいたい。そして…あの着物を脱がして抱きしめたいという欲望にゾクリと震えた。
パーティー開催時間前の数時間前、手はず通りビックニュースが流れあちら側は大慌てだ。
なんとかおさめる自信があったのか、会場にはあの女が俺の仮初め婚約者としてちやほやされている。
馬鹿な奴
あの時に諦めていれば恥ずかしい思いをこれからする事はなかったのに…
会長もまだ来ないところを見るといろいろ手を回しているのかもしれないが…無駄な事だ。
これで、あの胸糞悪い大臣も終わりだ。
祖父も利用価値がないと判断し、ここにやって来るだろう。
俺の麗奈を傷つけた仕返しは、今からあなたの目の前で彼女と2人で倍返しさせてもらう。
ホールでは、あちこちで騒ぎ出し不穏な空気が漂う。
そうこうするうちに渋い表情で現れた祖父と叔父は、あの女が駆け寄ろうとするも無視をして会場の中へ。
あの女の耳元で
『お終いみたいだな…俺の花嫁になれないようだ』
泣きそうな顔で出て行く女に悪いと思うも、俺の足は愛しの女に向かっていた。
麗奈
やっと、お前を婚約者として、いや花嫁として披露できる。
待たせたな…
今から俺がする事は、傷ついたお前の心を拭えるだろうか?
彼女の前に立ち声をかけた。
「……麗奈、久しぶりだね」
「……お久しぶりです。専務に昇進おめでとうございます」
引きつる彼女の表情に戸惑う。
嫌われしまったのだろうか?
「来てくれてありがとう…」
視線をそらす彼女の手をぎゅっと握りしめ、その手を引き会場入り口へ向かう。
「……ねぇ…待ってよ」
踏み止まろうとする彼女に
「もう、待たない。十分に待った。そんなに力強く踏ん張ると転ぶよ」
戸惑いながらも頬を染める彼女を連れていざ、大舞台へ