嘘から始まる恋だった
メイクを直してもらい結婚式が始まる。
お義父さんの腕に手を添えて歩くバージンロード。見知った顔に目頭が熱くなる。
その向こうには、普段から緊張なんてしないのか満面の笑みでこちらを熱い眼で見つめる男は、髪をサイドに流し、いつも以上に顔をキリッとさせて、すらっとした体型にライトグレーのタキシードがよく似合っている。
一歩近づく度にときめく胸。
義父から男の手に移動した手のひら。
指先に走るピリッとした甘い刺激にピクッと指先が動いていた。
男は、口角を上げ私の指先に唇をつける。
布越しなのに、直接触れられた感触がして頬が熱くなっていく。
「……」
私の反応を楽しんでいる高貴。
クスッと笑う声が聞こえた気がしたけど、神父さまの声に一気に緊張が始まった。
だって…
サプライズだよ。
打ち合わせも何もなしにぶっつけ本番。
頭が真っ白なまま誓いをたてて、指輪の交換だって緊張で指先が震えて、すんなり高貴の薬指に入っていかない。
アレ⁇
どうしよう…関節に引っかかってる。
焦って、パニックになっている私の指の上から男の指が手助けしてくれた。
左右に揺らしながら関節をクリアすれば
、スッと指に収まるリング。
ホッとするのも束の間、誓いのキスは唇の上で囁く甘い言葉と、とても甘美な口づけに逆上せていた。
『俺の全てを賭けて、幸せにするよ』