嘘から始まる恋だった
ここを決めた理由は、家電製品が装備してあり、添え付けのベッドとテーブルもあったからで、とりあえず、布団を一組買えば衣類だけ持ってすぐ引っ越しできたからだ。
部屋の前で鍵をさそうとすると、背後で舌打ちする男。
えっ…
振り向けば、機嫌がさらに悪くなっている気がする。
「どうかしました?」
「……いや…いい。それより早く開けてくれよ」
「あっ、はい」
急いでドアを開けて、玄関横にあるスイッチを押す。
パッアと明るくなる部屋に部長を招き、入ってすぐのキッチンに荷物を置いてもらった。
「私、パッパと作りますから、テレビ見て待っててください」
「一緒に作るよ」
部長からでる不機嫌オーラと距離をおきたい私…
「お金を出して頂いたのに、そういうわけにはいきません。そこで待っててください」
リビングを指差すのに、動こうとしない男は壁に寄りかかりだし、私の作業を見ているようだ。
視線を感じるも仕方なくお鍋を洗いご飯の準備を進めていく私。
カット野菜にお肉もカットしてある物を選んだから、順番にお鍋に投入していけばいいだけ。
後は煮えるまで待つだけだけど、持て余してしまう時間。
このなんとも言えない気まづい雰囲気どうしよう⁈
そう思っていたら部長が口を開いた。
「麗奈…君は本当に無防備すぎる」
⁇
「このアパートまでのあの薄暗い道…そして、部屋が一階、それも角部屋で隣は空き部屋。襲われたら抵抗もできない女性が住む場所じゃない」
確かにそうかもしれない。
昼間に急いで決めたから、そこまで気がつかなかった。
「すみません…」
「まったく、呆れるよ」
胸の前で腕組みする男。
彼が不機嫌だったのはそれが理由だったようだ。
「これから毎日送るから…」
「そんな…お忙しい部長にそこまでしていただかなくても、大丈夫です」
壁から離れ、近づいてくる男に後ずさり
隅においやられる。
ドンと私の頭の上で肘下を壁につけ覆うように近づく距離。
「俺は、君をあいつから守るって決めたんだ。断るっていうなら安全な場所に引っ越ししなおしてもらうよ」
そんなお金なんてない…
それに、この距離は顔が近すぎてドキドキして視線が彷徨う。
「…では、申し訳ないです‥けど…お願いします」
「頼み方が他人行儀すぎる。さっきから気になってたが敬語禁止って言っただろう⁈」