嘘から始まる恋だった
さてと…
言われた通りロックをかけチェーンもかけて戸締りをしっかりしてから、後片付けを始めたけど…1人きりになった静かな部屋が、寂しいと感じてしまうのはどうしてだろう?
手を止め、部長の面影を探してしまう。
そんな時、玄関のチャイムが鳴る。
「は〜い」
誰かも確認しないでチェーンを外しロックをカチャンと回すと外側からドアが開いた。
そこに立っていたのは不機嫌丸出し顏で目を細め上から睨んでくる男がいた。
「…麗奈…誰か確認しないで開けるんじゃない」
「はい、すみません」
「こんな調子じゃ心配でならない。あいつだったらどうするつもりだったんだ?」
玄関先でお説教が始まるから、つい、反抗してしまった。
「子どもじゃないんだから、そこまで心配してもらわなくても大丈夫……」
ドンとドアを拳で叩き怒っている部長。
「大丈夫なものか⁈あいつに何をされたか思い出してみろ…同じ男としてあいつの執着さには驚くが、それだけお前の事が好きなんだぞ。次に何をしてくるか⁈
ここにいる俺があいつだったら、お前はどうなってるんだ⁈」
真剣に心配してくれているのに…お前呼びされた瞬間、ときめいている軽率な私がどこかにいて、嬉しくて頬が緩んでいる。
「おい…麗奈。聞いているのか?」
「うん…心配してくれてありがとう。高貴の言う通り義兄さんだったら今頃、押し倒されて無事でいられなかったかもしれない」
「かもしれないじゃない…」
怒っている男は、私の肩を抱き寄せ抱きしめてくる。
ドアがバタンと閉まり、男が私の頭を優しく撫で始める。
「……頼むからもう少し危機感持ってくれよ」
それは、まるで恋人にでも言うように甘く切ない声だった。
キュンと高鳴る胸の鼓動
私は、部長に恋しているの?
「……ごめんなさい。気をつけるから…高貴に迷惑かけてばかりいるのに…自覚がなさ過ぎたわ」
男はコツンとおでこを指で小突き
「迷惑だなんて思ってない。俺たちは……お互いを必要としているんだから、そんなこと言うなよ……ただ、俺のいないところで麗奈に何かあったら一生後悔するから自覚があるのか確かめに来ただけさ」
言い訳がましく理由をつけ離れていく体を寂しいと思ってしまう。
「いいな…もう2度と確かめもせずにドアを開けるなよ」
「……はい」
「よし…なら今度こそ帰るわ」
戸締りしろよっと頭を数回叩き、苦笑いして帰って行った。