嘘から始まる恋だった
「確かにそうかもしれないね」
顎に手を添え考える義父。
「それで、先ほどの話から真剣な交際だとわかって頂いたと思うので言うのですが、彼女と結婚を前提に同棲することを許して頂けないでしょうか?」
「えっ…えー」
横にいる高貴に向かって叫んでいた私。
義父だって驚いている。
「け、結婚を前提にかね…だが、君達はまだ付き合い始めたばかりじゃないのかね⁈」
「はい…確かにそうです。ですが、付き合った日数なんて関係ないでしょう⁈僕は、結婚するなら彼女しかいないと思っています」
熱い眼差しで見つめて、膝の上にある手をぎゅっと握ってくる高貴。
これは、演技だと言い聞かせないと心が持たない。
よく、キュンキュンして死にそうって友達が言っていたが、今が、まさにそれだとわかった。
突然、涙ぐむ義父。
「……高貴君、麗奈ちゃんを泣かせたら許さないからね」
池上君から高貴君に呼び方が変わった義父に驚きながら、義父の言葉に耳を疑った。
えっ…それって
「それは、結婚を前提に同棲することを認めてくださると言うことですね」
何かわざと言葉を強調した気がするけど…気のせいかしら?
「もちろんだよ。そこまで麗奈ちゃんを思ってくれる君なら彼女を任せられる」
ちょっと待って…慌てて前のめりになる私を痛いほどぎゅっと握ってくる高貴。
「お、お母さん、反対しないかな?」
せめてもの抵抗を試みる。
「大丈夫だよ。お母さんは早く孫の顔がみたいと前々から言っていたから喜ぶはずだ」
お義父さん…交際を認めてくれるだけでいいのに…同棲は反対しようよ。
ソファの背にそのまま体を預けて天井を見上げた。
「麗奈ちゃん?嬉しくないのかい?」
「えっ…そんなこと…嬉しいよ」
「彼女は、ここに来るまでずっと反対されると思っていたのでお義父さんに賛成して頂いて驚いているだけです」
動揺を隠せない私をサポートする高貴。
次から次と言葉巧みに嘘が出てくるものだと感心する。
「そうだね…本当は交際さえも反対しようと思っていたんだよ。高貴君は、会長の1番のお気に入りだ…その会長の気持ちを無下にしてまで高貴君が真剣な気持ちだとは思えなかったからね。でも、こうして話を聞いて君の真剣さがみえたから同棲まで許すんだよ。それの意味がどういうことか君はわかっているよね?」
「はい…もちろんです」