嘘から始まる恋だった
甘い蜜には毒がある
ただのルームウエアなのに…
甘い眼差しに見つめられて甘みを含んだ声で
『目のやり場に困る』
と言われ自分の無防備さに恥ずかしくなる。
慌てて
「おやすみなさい」
と部屋の中に飛び込みドアを閉めた。
ずっと、母と2人暮らしだったし、大学も女子寮だったから男の人の前で何か羽織って出るという感覚がなかった。
当たり前になっていた行動が、高貴が言うように無防備過ぎるのだと教えられる。
もしかしたら…
義兄を誘惑したつもりはないけど…軽率な格好や行動が義兄にあんな事をさせてしまったのだろうか?
それなら、私が悪いの?
義兄と違い、高貴は思いとどまってくれた。
高貴になら、あのまま流されて抱かれてもいいと思ったなんて言えないけど…
私は、抱かれる資格さえもないのかもしれない。
あの日の光景を思い出し、気持ち悪くなっていく。
高貴に言えない私の秘密。
20歳の成人式の後、義兄としてお祝いしたいと言われ仕方なく飲みに行った。
アルコールの低い甘いカクテルだと思っていたのに…記憶をなくすほどのアルコール濃度。
気づいた時は、ラブホで全裸になった私の上に義兄が上半身裸で乗っていた。
動かない体に赤い跡をつける唇、肌を弄る手、そして…スマホで裸体を撮るカメラの音が蘇ってくる。
「イヤ……」
大きく叫んだ声に飛び込んでくる男。
「どうした…大丈夫か?」
体を震わせおびえる体を優しく抱きしめてくれる腕にしがみついていた。
「イヤ……イヤ…。ねぇ、私が悪いの?
こんな体新しく交換できたらいいのに…高貴に触ってもらえる資格ないの」
自分の体を叩いて痛めつける私の手をとり、ぎゅっと抱きしめて頭を撫で泣きじゃくる私が落ち着くまで側に寄り添ってくれる高貴。
「大丈夫だから…どんなことがあっても麗奈が好きだと言っただろう⁈資格がないとか決めつけるな…」
そう言ってもらえて嬉しくてグズグズと泣き止まない私。
よしよしと子供をあやすように優しく微笑み
「このまま抱きしめていてやるから、一緒に寝るか?」
今は1人になりたくない。
また、思い出してしまうから…
高貴の側だとホッとするから…
コクンと頷く私を抱き上げて
「このベッドじゃ狭いから、俺のベッドに連れて行っていいか?」
返事も待たずに歩き…高貴の広いベッドでそっと抱きしめられて横になる。
何度も頭部に優しくキスをおとしていく男のリズムにいつしか眠りについていた。