嘘から始まる恋だった
「ドキドキしてるよ」
「うそつけ…ドキドキするっていうのはこうだ」
私の手をとり、男の心臓の上に乗せる。
手のひらから伝わる男の速い鼓動にビックリして顔を見つめる。
頬をほんのり染め
「あんまり見るな」
小さな声で叫んだ男の腕の中にとらわれて、耳のあたる胸の鼓動が一段と速くなる。
憎らしいぐらい余裕のある表情を浮かべる男が、こうして頬を染めドキドキしている姿に笑いが溢れてしまう。
「高貴でもドキドキするんだね」
「当たり前だ…好きな女を抱きしめていてドキドキしないわけないだろう⁈いったい、俺をなんだと思ってるんだ⁈」
好きな女って…
初めてちゃんと言葉にしてくれて頬が赤くなる。
「だって…いつも表情が余裕ぽいんだもの」
「お前に関して余裕なんてない。俺をこんな風にドキドキさせるのはお前だけだ」
そんな甘いセリフにこっちがドキドキさせられてる。
「うそばっかり…平気な表情でキスしてくる癖に」
「なら、確かめてみろよ」
そう言った男の指が顎をクイっと持ち上げたかと思うと、唇が重なる。
鼻先をこすり、何度も重ねる唇に瞳を閉じようとすると
「目を閉じるな。…そのまま…俺がお前にどんなふうにキスしているのか見ていろ」
重ねる唇の合間に切ない声で囁く男の表情が、しだいに変わってくる。
なんというか瞳の奥に見える男の欲情…
なんとも言えない色気のある表情に、ゴクンと唾を飲み込む。
こんな表情でキスされていたのかと思うと…体の奥底がギュンと戦慄くような感じに男にしがみついていた。
キスをしながら、私の体を簡単に持ち上げ男の膝を跨ぐように座らさられて変わる体制。
私を下から見つめる瞳は扇情的で、まるで私が高貴にせがんでキスしているように思えてくる。
下から唇を塞いでくる男の片手が私の後頭部を押さえ、もう一方の手は私の手をとり男の胸に手を当てさせた。
聴覚と視覚を煽られ、熱くなる体を更に熱くさせるのは、男の胸の鼓動だった。
「俺をキスだけでこんなにドキドキさせるくせに…嘘つき呼ばわりして、挙句に俺の告白を流したままにしたよな」
艶めいた瞳を細め、意地悪く口角を上げる男。
「……だって、それは……」
「言い訳は聞かない。麗奈にもドキドキしてもらわないとな」
「ドキドキしてるもん……ほら」
今度は、男の手をとり私の胸に手の平を当てさせてみる。
「……」