嘘から始まる恋だった
満足そうに片手にたくさんのショッピングバックを持ち、私と手を繋いで駐車場まで歩いている。
恋人同士のように当た前に繋いでいる手。
私を好きだと言ってくれるこの男が、愛しい。
好き
口にできたらどんなにいいだろう…
男を見つめて
「……高貴。たくさん買ってくれてありがとう」
「気にするな…俺が勝手に買ってるだけだろう⁈」
そうなのだ。
私に気を使わせない為に勝手に服や下着を選んでいたように見えるけど…実際は、私好みの物がほとんど。
少ししかない服を見ただけで、好みを把握してしまうなんて、どれだけ女性経験が豊富なのかと憎たらしく思えてしまう。
「そうだけど…」
「好きな女にプレゼントしたいんだ」
チュッと繋いでいる手の甲にキスをする男。
「お前が俺を好きだと認めたら、この手の薬指に婚約指輪をはめてもらうからな」
「……」
突然の宣言に言葉が出てこない。
してやったり顏の高貴が笑みを浮かべ、唇にキスをしてきた。
「近いうちに好きだって言わせるから」
ぼっと熱くなる頬を指先で突っつき
「早く認めろ」
にやっと笑い、私の心を見透かしている男。
全てをさらけ出す勇気がなくて…
「認めない…」
顔を背けてしまう。
「フッ…つれない麗奈もかわいいけど…素直にキスに応えて好きって言ってるお前の方が俺は好きだ…」
「言ってないてば…」
頬を染めギロっと睨んで見るけど…反応を楽しんでいる様子の男。
だから…手を振り払い背を向けた。
「きゃっ…」
背後から荷物を持ったまま抱きしめてきて、耳元で囁く男。
「焦らされるほど燃えるって知ってるか?」
「そんなの知らないわよ」
冷たくなっている耳に温かい唇を当ててきて…ビクッと体が反応する。
「俄然、燃えてきた。どんな手を使っても言わせる」
「…ぁ」
言い終わると同時に耳を甘噛みして離れて先を歩いていく。
暖かかった背中が急に寒くなったせいなのか…
男の艶めいた声で囁かれたせいなのか……
ぞくっと身震いする体を両手で抱きしめた。
顔だけで振り返り、そんな私を見て意地悪く笑う男。
なんだか悔しくて…
その場で立ち止まる私。
フッと笑い、今度は男も立ち止まり体ごと振り返る。
そして…
優しく微笑み両手を広げて
「麗奈…おいで」
甘やかな声に諍えなくて無意識に男の腕の中に飛び込んでいた。