嘘から始まる恋だった
その日から変化した2人の関係。
私に用意してくれた部屋は、荷物置き場へと変わり高貴の広いベッドで一緒に眠り、目覚めて朝を一緒に迎える。
私を抱きしめてキスしてくれる高貴の腕の中は暖かくて、優しさに包まれて幸せな日を過ごしている。
「麗奈…おはよう」
「おはよう…んっ…はぁ……ぁん…ダメ、だよ。…仕事に…んっ…遅れ…るんっ……」
毎朝、日課となってしまったモーニングキスは、高貴主導の下で甘やかに始まり、名残惜しさを残して離れていく…意地悪なキス。
「さて、朝ごはんの支度しておくから麗奈は準備しておいで…」
いつも、私をその場に残して、リビングに行ってしまう。
口では抵抗しているけど…もう少しキスしてほしいと思うのに…好きと言えないから何も言えない。
着替えを済ませ、化粧を済ませてリビングに行くと出来ている朝食。
いつもながら鮮やかな手際の良さに感心する。
ご飯にお味噌汁、おかずは焼き魚に酢の物、出し巻き卵。
「いつもありがとう」
高貴の横に並び、支度を手伝う。
「これぐらいすぐにできるし、お礼に麗奈からのキスがあるから苦じゃないよ」
んっと顎を少し突き出し、目を閉じて私からのキスを待つ男。
背を伸ばし
チュッと唇に触れてテーブルにつく。
そうなのだ…
2人のルールになってしまったキス。
朝食を作ってくれた高貴の代わりに、後片付けは私がする。その間に高貴は仕事に行く準備ができるから…
「片付けサンキュー」
と横から顔を出してきてチュッと唇に触れて離れると、ネクタイを締めてと言うから締めてあげる。
お礼にまたチュッとキスしてきて…
身支度を整えて一緒に出かけようとすると…玄関先で少し長いキス…が始まる。
「もう…」
「…行くか」
いつもの朝の習慣になりつつある高貴とのキスは、新婚夫婦のような錯覚を起こさせる。
仕事先まで手を繋いで歩き、まだ誰も出社しないロビーの隅で隠れるようにキスをして…
高貴はエレベーターへ
私は、更衣室へ
お昼休憩は高貴に合わせて一緒にとるように言われ、休憩が終わるギリギリまで一緒にいる。
定時であがる私と違い、12月に入って忙しくなった高貴。彼の仕事が終わるまで向かいのカフェで待つ時間は、意外と幸せで…男が急いで駆け寄ってくる姿に頬が緩むんでいる。
だけど、2人の関係は…
キス止まりの関係で恋人でもない。