嘘から始まる恋だった
そんな私に苦笑し、吸い終わるとタバコの味がするキスをくれる。
頭をポンポンと優しく叩いて
「お風呂に入ってこいよ」
「……うん」
私は、高貴をその場に置いてお風呂へ。
高貴と違い、長風呂の私がお風呂から上がって行くと床に座りソファを背もたれにしてテーブルの上にノートパソコンを置いてにらめっこしている高貴。
左手にタバコ
右手は、キーボードの上か缶ビールを持っている。
ここ数日は、仕事が忙しいのか度々こんな光景を見る。
邪魔しちゃいけないと思い、ソファの上にちょこんと座って音を切った状態で携帯ゲームを始める私。
しばらくして区切りがついた高貴もソファに上がってきて背を伸ばすと、私のスマホを取り上げて私を向かい合わせに抱き上げる。
毎回、慣れない体勢に戸惑いながら…
「麗奈…俺を癒して」
ぎゅっぎゅっと抱きしめてくる男の背を優しく抱きしめあげる。
すると…
「ベッドに行こう」
人の返事も待たずに抱き上げて寝室に向かう。
ベッドの中で腕枕されて、おやすみのキスをすると…あっという間に寝息を立てて眠ってしまう男。
疲れているのに…
私の為に時間を過ごしてくれる高貴に感謝して
「いつもありがとう…高貴、大好き」
毎回眠りについた男の唇にそっとキスをして愛の告白をする。
そんな日を繰り返して12月半ばのある日
会社のお昼休憩をいつもように高貴と過ごしていると
「麗奈…急だけど明日から一泊二日の出張になった」
「……」
「大丈夫か?」
「……うん」
「俺としては、会社を休んでマンションにいてくれる方が安心するんだが…セキリュティもしっかりしているし、コンシェルジュを通さないと上には上がれないからな」
「……会社を休む訳にいかないもの。タクシーを使って通勤するから心配しないで…」
心配かけたくないから…
不安を抱えながら笑顔で微笑む私。
不安でいっぱいの私を見透かして怪しんでいる男が…私の頬を撫で見つめてくる。
「ちゃんと家に着いたら電話するから……高貴は仕事頑張ってきて…」
「……ちゃんと連絡すること。それから用心しろよ」
「うん」
ーーーーーー
次の日の朝早く、高貴は出張に行ってしまった。
残された広い部屋に1人きり
2人でも広いと思っていたのに……
1人だと余計に広く感じて寂しくなる。
たかが、一泊二日なのに…
無意識に男の部屋着を抱きしめていた。