嘘から始まる恋だった
『……ふふふ、もう、お前の中ではそこは既にお前の家って認めてるんだな』
「えっ…」
『後は、麗奈の心か?』
「何よ…それ?」
『惚けんな…俺を好きだと認めれよ』
電話口の向こうから甘やかな声が聞こえる。
好き
好きだけど…ふと、優香の言葉が頭を過った。
「……その前に、聞いてほしいことがあるの?」
『…なんだよ』
「電話じゃ言えない。明日、帰ってきたら言うから、ちゃんと聞いてほしいの」
『……わかった。明日、20時頃には帰れるから』
「うん…待ってる」
『俺のものになる覚悟ができたんだな』
ボッと頬が熱くなっていく。
「……何のことかわからないもん」
クックククと笑う声が響き
『明日は、俺を焦らした罰をベッドの中でたっぷり受けてもらうからな。ソファの上とキッチンは次で我慢してやるよ』
「……ばか…そんなこと言うなら切るからね。おやすみ」
顔を真っ赤にして電話を切った後も、高貴の言おうとすることがわかるから緊張でなかなか眠れず、朝を迎えた。
昨日と同様、タクシーに乗り出勤。
後は、いつもと何も変わらない時間を過ごしているのに、胸がざわついて落ち着かない。
気持ちの整理がつかないまま、あっという間に定時が来て更衣室で着替えを済ませていると
「麗奈、今日さ…ちょっとだけ付き合ってほしいんだけど…いいよね⁈」
「……えっ…どこに?」
逃がさないというように手を繋いでくる優香。
会社を出ると待っているタクシーを無視して、優香に引っ張られてドンドンと歩いて行く。
「どこ行くの?」
何も言わない優香に連れてかれたのは、駅近くにあるカフェだった。
そこにいたのは…
「……義兄さん⁈」
「麗奈、頼む…話を聞いてくれ」
「優香、どういうことなの?」
私の怒りの先は優香に向いた。
「ごめんね。でも、私と麗奈の為なの」
昨日の昼に見た女の表情をした優香がいた。
……そうなんだ。
優香も苦しくて…
切なくて…
どうにかしたいんだね。
それなら私は逃げない。
「何の話?」
「……麗奈。俺はお前が好きだ。いや、愛してる」
「私は、何度も義兄さんとしか見れないと言ったわ」
「…だけど、2人の初めての夜がずっと忘れられなくて、嫌われていても諦められない」
「……無理矢理だったわ。私は忘れたくて、どんなに悩んだと思っているの?」