嘘から始まる恋だった
「ありがとう…少し楽になってきた」
「それなら良かったけど…話せる?」
「うん…昨日体調悪くて休んだでしょう⁈風邪だと思っていたんだけど、病院で妊娠してるって言われてすごく嬉しかったの…その帰りに…マンション前に会長が待っていて…高貴の為に別れろって…」
「……まさか、どこかの令嬢との結婚話、諦めてなかったってこと?」
「優香も知っていたんだ⁈」
「うちの会社の跡取りは池上部長が最有力候補だったから、彼の結婚相手はどこかの社長令嬢だって有名な話だったのよ。その彼が麗奈を選んで付き合いをオープンにしているから誰もが本気なんだって思うわよ。それなのに…今さら、別れろって、なんなの?」
「……だよね。会長が言うには会社の跡継ぎは高貴しかいないって言うの。彼の代で会社を更に盤石にするには大きな後ろ盾が必要なのよ。政略結婚になかなか頷かないから、しばらく好きなようにさせてやったんだって……私がいなくなれば頷くって……私のせいで夢だった社長の椅子を諦めて欲しくない」
「そんなのおかしいわよ……麗奈が犠牲になる必要なんてない。それに池上部長が麗奈を選んだんだよ。そんなの無視しなさいよ。2人の赤ちゃんでしょう⁈生まれてくる子の為に別れちゃダメだよ」
「……私もできるならそうしたいよ…でも、社長になれなかったら?私とこの子の為に社長の夢を諦めてしまったら…私、申し訳なくて…それに、お義父さんにも迷惑かけれない」
「……専務?どうして専務が出てくるのよ…」
「私がいなくならなければ、お義父さんと義兄さんを首にするって……」
「どうしてよ…」
義兄さんの名が出て優香も焦りだす。
「義兄さんが起こした問題をお義父さんが上に報告しなかったらしいの。身内を庇う部下は置いておけないって……でも、私さえいなくなればそのままなかった事にしてもいいって言われて」
「卑怯だわ…断れないってわかって脅すなんて、許せない」
怒りで優香が声を荒げていた。
「義兄さん、何をしたの?」
「……私も、詳しくは知らないけど…池上部長を追い落とすつもりで商談を何度もダメにしたらしいの」
そんなことを⁈
「専務の責任じゃないはずなのに…飛んだ言いがかりだわ」
「そうかもしれないけど…私が別れなかったらお義父さんに迷惑がかかるのは確実だわ」
「……この際、池上部長に相談したら?」
「高貴に話たら、会長はお義父さん達を首にするって」