嘘から始まる恋だった
「あの爺さん、本当に最悪……打つ手がないじゃない」
「だから…私、妊娠を隠して高貴と別れようと思うの」
「どうしてよ。隠す必要ないじゃない…部長なら麗奈を守ってくれるって」
「私もそうだと思う…だから、別れるの…姿を消しても彼なら探しだすと思う。だから、ちゃんと彼の為に別れなくっちゃいけない…憎まれてもいいの…彼の夢が叶うならこの子と2人で生きていける」
「……麗奈…」
グスグスと泣き出す優香。
「麗奈の気持ちは変わらないのね」
「うん…」
「……別れたら、どこに住むの?専務の家?」
「ううん…妊娠しているのに別れたって知ったら、お義父さんなら高貴に話てしまう…だから、しばらくは1人で暮らすつもりだけど…住む場所を後、1週間ほどで見つけないと…3月になっちゃう」
「そんな急なの?」
「会長からのタイムミリットが今月いっぱいなの…だから、高貴にバレないように住む場所を決めてから高貴に一方的に別れ話をしてその日のうちにマンションを出ようと思う。会社も辞めて、妊娠していても働けるところを探さなくっちゃ…」
しなければいけないことが次々と出てきて、不安になっていく。
「そんなに思いつめてるから悪阻がひどいのよ」
そうかも…急な悪阻は、精神的なものかもしれない。
「……私に任せて…確か、私の住んでるコーポに空き部屋があったはず。近くにいれば麗奈の力になってあげれるもの…そこにしましょう。仕事は…後から探せばいいわ」
決まったとばかりに優香は大家さんに電話をし始めていた。
電話越しにオッケーサインをする優香。
保証人には、優香でもいいと話をつけてくれて…敷金礼金は本来なら無理な話なのに…優香が交渉して半分の値段にしてくれた。
後は、会長に返事をして会社を辞めるだけ…
優香とロビーに戻った私は、すぐに会長室に電話をかけた。
「会長に取次お願いします」
「どちら様でしょうか?」
「花崎と言っていただければわかると思います」
隣で優香が手を握ってくれる。
「……少々、お待ちください」
会長秘書も事情を知っているのかすんなり取り次いでくれた。
「もしもし…」
「花崎です」
「どうするか決めたかね?」
「はい…高貴さんとちゃんと別れます。だから…お義父さん達はそのままで首にはしないでください」
「もちろん約束するよ。邪魔なのは君だからね」