嘘から始まる恋だった
心の声が聞こえたのか⁈
「小さなって言っても、建物がじゃないけど…5組限定の宿なんだ」
「えっ…5組だけなの?それなのに空いてるなんて…」
石畳から転けそうになる私の腰を引いて…
「ほら、気をつけて…ここはプライベートを優先してくれるそういう宿なんだ」
「……」
お金持ちの人の為の宿ってことか……
そうじゃないと5組限定ってありえないものね。
来た時には鯉に目が行き、気がつかなったけど…池の前まで来ると左右に別れている道があった。
「こっちだよ」
高貴は私の腰に手を当てたまま、池に沿って左に歩いて行く。
そして、見えて来た平屋の建物。
家だと思えるぐらいの大きさに、声が出ない。
カチャカチャと鍵を開け、引戸の開ける高貴。
あまりのスケールの大きさに緊張している私を見てクスッと笑う男。
「ほら、おいで…」
手を引かれ入る玄関。
本当に一軒家じゃないのかと思えるぐらい広くて、靴を履いて上がり広間を抜けて襖を開けてみる。
畳12畳ほどの広い空間のガラス窓の向こうに艶やかな牡丹が咲き誇り庭を埋め尽くしている。
「綺麗…」
「綺麗だろう⁈麗奈見せたくて…喜んでくれてよかった…連れてきた甲斐があったよ」
「……ありがとう」
あなたとの素敵な思い出になったわ。別れを意識してしまいしんみりとする自分を気づかれないように
「他も見てきてもいい?」
子どものように高貴の腕を掴み、手をブラブラとふった。
「あぁ…」
クスッと笑い、愛しそうに見つめる眼差しに、子どもじみた行動をしたことに恥ずかしいのと、心の奥を見透かされそうで男の視線から逃げるように隣の襖を開けていた。
一段高くなったそこは、板張りの床にキングサイズのベッドが中央に置いてあり、その向こうに見える障子戸が明かりをいれる為に開いていて、外にはヒノキの露天風呂が……
プライベート宿と言うだけあって、素敵な内装に…一泊、いくらするのだろう?
と考えていた。
背後から私を抱きしめる腕
「余計な事考えてないで、ゆっくり温泉に入ろう…」
耳元で甘く囁く声に素直に頷いていた。
寝室の横に、脱衣スペースがあり内風呂と外の露天風呂とが繋がっている。
いつもと違う雰囲気に大胆になる私達。
キスを交わしながらお互いの服を脱がしあい、お互い肌を弄り熱くなる体は、外の冷たい空気が気持ちいいと思えるぐらい火照っていた。