嘘から始まる恋だった
夕食は母屋から運ばれて来て、2人きりの閉鎖された開放的空間。
高貴は、お酒も入ってご機嫌の様子で私の膝の上で将来の夢を語り出した。
「俺がどうして社長になりたいか話てなかったよな⁈親父は大和に勤めていて受付嬢をしていたお袋と出会ったんだ。だけど長女だったお袋には、当時政略結婚を目的とした許婚がいた。それが今の社長だ……実力と才能があった親父は祖父のお気に入りだったおかげでお袋が俺を妊娠したことで結婚を許されたけど…大和の性は名乗らせてもらえなかったんだ。お袋の許婚だった現社長は…祖父の命令で妹である叔母さんと結婚をして大和に婿入りしてきた。そして、親父を邪魔者扱いして蹴落として今の地位に就いたんだよ。だから、俺はいつか必ず大和の社長になって根本から全てを見直して実力もないのに一族ってだけで役職に胡座をかいている奴らを追い出して、才能ある奴にチャンスを与えてやるんだ……専務も苦労してやっと今の地位に就いたと聞いた…だから、必ず俺がトップに立って誰にも文句を言わせない実力主義の会社にする」
「うん…高貴ならできるよ」
牡丹の花が咲く外はちらちらと降る雪景色。初めて聞く男の思いに…私が側にいてはいけないと改めて思いながら、膝の上にある柔らかい髪を撫で高貴の話を聞いていた。
「……一度もお会いしてないけど高貴のご両親は今はどうされているの?」
「あぁ、アメリカの支社を立ち上げることになった時に自ら志願してお袋を連れて向こうに行ってしまったよ。新婚旅行の時に紹介するから」
「えっ…」
「心配するな…あの人達はお前に会えるのを楽しみに待ってるから…なんてったって常盤専務と親父はライバルだったらしいからな…とても喜んでいるよ」
「……」
これから高貴と別れようとしているのに…そんな風に言われると別れが言い難くなってしまう。
「……どうした?」
「……ううん、なんでもないよ」
微笑み小刻みに首を振ってみせた。
「麗奈…幸せになろうな……」
優しく微笑む高貴に笑みを作り笑うしかできない私。
気が抜けたのかスーッと寝息を立て深い眠りについた高貴の寝顔を見つめ、薄い魅惑的な唇に触れるだけのキスをした。
「……こうき…愛してる。必ず、あなたの夢を叶えてね」
朝が来るまで一枚の布団の中で高貴に寄り添い外が明るくなる頃、私は1番卑怯な手段で男の前から姿を消した。