嘘から始まる恋だった
立ち尽くしたままプルプルと震える手から、置き手紙がひらひらと床に落ちていく。
感情がこもっていない淡々とした文章
なんなんだ⁈
くそっ……
怒りでテーブルの横にあるゴミ箱を蹴ると、中から沢山のティシュのゴミと一緒にクシャクシャに丸められた紙が出てきた。
麗奈の置いていった便箋用紙と同じ柄に自然と手を伸ばして、テーブルの上でシワを伸ばし破れた箇所を繋げると泣きながら書いたのだろう…
沢山の涙の跡が…紙に残っていた。
高貴へ
突然、こんなことをしてごめんなさい。
あなたと過ごした数ヶ月は本当に幸せでした。もう、2度と恋なんてできないと思っていた私を救ってくれて愛してくれたあなたには感謝しています。
とても幸せな時間をありがとう。
私は、あなたを幸せにすることも何も返すこともできないから…
あなたと別れることを選びます。
そうすることで高貴の夢が叶うなら、離れても平気……
(ここで、ぽたぽたと涙の跡で字が滲んでいる)
滲んだ時の中に「愛してる」と綴った文字が見え、俺は涙が流れていた。
彼女は、この手紙をどんな思いで書いたのだろうか?
山のようになっているティシュが物語ってるように、きっと、彼女は涙で頬を濡らし、泣きじゃくりながら別れの手紙を書いたのだろう。
そして、書き直した手紙の存在
感情がこもってない文章をどんな思いで
書いたのか⁈
想像するだけで、彼女に辛い選択をさせた自分の不甲斐なさに腹が立つ。
愛しい存在を捨ててまで、大和建設の社長になることにどんな意味があるんだ。
政略結婚より愛する麗奈を選んだ時点で、俺は自分の力でトップに立つと決めた。そのことは、彼女にも話したはずなのに…俺の為に別れを選んだ彼女。
俺に好きでもない女と結婚して社長になれと言うのか?
愛しい存在を知ったのに、今更、愛のない結婚をして幸せになれるはずがない。
隣にいるのは麗奈じゃなければ、幸せになんてなれないんだよ。
社長の椅子よりも麗奈が大事だとなぜ、伝わらなかったんだ…
上着のポケットからスマホをとり、もう一度麗奈に電話をかけてみるがつながらい。
やっぱり、ダメか…
それから、麗奈の義父である常盤専務に電話をかけた。
「もしもし…」
『高貴君?……何かあったのかい?』