嘘から始まる恋だった
声のトーンだけで、何かを察した専務。
「…麗奈から連絡ありましたか?」
『いや…何も』
「そうですか……実は、麗奈が置き手紙だけを残し姿を消しました。きっと、会長からの圧力があったと思います。(そうでなければ、姿を消す理由が思い当たらない。俺が嫌いになったのなら、別れを選べばいいだけだ。)専務、例の件、急ピッチで進めることにしたので力になってくれますよね⁈」
『決めたんだね…』
「はい…麗奈を連れ戻す為にも会長の思惑通りにはさせません」
『それなら、君は計画を進めてくれ…私の方は信頼できる人間に声をかけてみよう』
「お願いします」
『これから忙しくなるね…麗奈ちゃんは、こちらで探そうか?』
「いえ…俺が必ず見つけます」
『…わかった。任せるよ』
「では、失礼します」
電話を切った後、俺はある人物に連絡をとった。
『………』
「……零…俺だけど、力を貸してほしい」
『……お前には貸しがあるが、内容次第だ』
「会長に気づかれないようにお前の親父の会社系列に参入することは可能か?」
『可能だろう…まさか、お前大和を出るのか?』
「あぁ…会長のやり方は許せない」
『一体何があったんだって聞いても答える訳ないか⁈』
「…お前は会長を尊敬しているからな…血が繋がっていないのが羨ましいよ」
『女絡みか⁈』
鋭い男に言葉が詰まる。
『お前が1人の女の為に会長を裏切って大和を捨てるなんてな…』
「捨ててないさ…いずれは大和は俺の物になるが、俺の意思を無視した会長には反省してもらうだけだ」
『……わかった。面白そうだから手を貸すよ』
「サンキュー。恩にきるよ」
『これで、例の貸しはチャラだからな。親父に連絡しておく。後は自分でなんとかしろ』
そう言って向こうから電話を切られてしまった。
当たり前か⁈
ロスにいるあいつにしたら真夜中だものな…
寝ているところを起こして悪かったよ。
スマホをテーブルの上に置き、置き手紙の重石がわりに置いてあった青い箱を手にとってぱかっと開く。
そこには、麗奈にあげた指輪が光っていた。
麗奈…
彼女の薬指に指輪をはめた時、感極まって涙で顔をクシャクシャにして幸せと微笑んで抱きついてきた彼女。その温もりを抱きしめ幸せにすると誓った日を思い出し……グッと箱を握りしめた。
会長、あなたの思い通りにならない事があると教えてやるよ。