嘘から始まる恋だった
申し訳なさそうに『うん』と頷く優香。
玄関先から聞こえた会話から、義兄なりに私と優香に気を使っているのがわかったから、それ以上何も言わずに優香の手をとって微笑んだ。
『蒼さん、変わったんだよ。麗奈を苦しめた原因が自分にあるって…そして、そのせいで麗奈と部長が別れなければいけないって知って……麗奈は嫌がるだろうけど償いたいって。俺にできる事は金銭面で援助することしか今はできないけど、麗奈がいつか本当に心から俺のしたことを許してくれる日があるならどんなことでも力になりたいって泣いてたんだ』
今は、何を聞いても心に響いてこない。
義兄さんが変わったからといって、私は愛しい人と別れなければならなくなった原因を作ったのは、義兄なのだから……
誰のせいでこうなったと思っているのという腹立たしさで、金銭面の援助なんて当たり前でしょうと思う自分に嫌気がさすのに…誰かを憎まなければ…私の悲しみと苦しみが癒えないから憎んでしまう。
本当は違うのに…
翌日
優香は出社した後、私は自分の部屋に行った。
昨日まで、してもらって当たり前だと言い聞かせていたのに…いざ、目の前にすると義兄さんが揃えてくれた家具や電化製品の数々に嬉しさで涙が溢れてくる。
テレビも冷蔵庫もその他の電化製品は、すぐに使えるようにそれぞれの位置に置かれていた。
ベッドだって組んであって、すぐに生活できる部屋になっている。そして、それぞれから出たダンボール箱などのゴミも綺麗に片付けてあり何もしなくてもいい状態にしてあった。
あんなことがなければ、本人に素直にお礼が言えるのに…まだ、私の中にあるわだかまりが邪魔をしてお礼を言えずにいた。
その日から、私は1人暮らしを始めたが毎日、悪阻に悩まされほとんどの時間をベッドで過ごしている。
会社から帰ってきた優香が、毎日果物など私が口に入れれる物を買って持ってきてくれるけど…結局、もどしてしまう。
そして、1人暮らしを始めて2週間もしないで、とうとう入院するはめに。
気がついたら腕に点滴の針が入っていて、心配そうにしている母と優香の姿が見えた。
「麗奈、気がついたのね」
「良かった…心配したんだからね」
「もう、あなたって子はどこまで心配かけるの」
「入院することになって叔母さまに連絡するしかなかったのよ」
2人が交互に話しかけてくるけど、状況を飲み込むまで時間がかかり言葉が出てこなかった。