嘘から始まる恋だった
「……私、入院したの⁈赤ちゃんは?」
突然、暴れる私に母が抱きしめてきた。
「大丈夫よ。あなたと高貴さんの赤ちゃんは元気だから安心しなさい。麗奈は、赤ちゃんの為にしばらく入院するだけだよ」
抱きしめている背中をさすり、優しくポンポンと叩いて落ち着かせようとする母。
しばらくして落ち着いついてきた私は、突然、泣き出した。
なぜ泣いたのかは理由はわからないけど…
不安な気持ちが母の優しさに触れてホッとしたのかもしれない。
「大丈夫よ。安心して産みなさい…お父さんもわかっているから…あなたに自分達のせいで負担をかけて申し訳ないって言ってたわ。それでね…お父さん…蒼さんと一緒に会社を辞めたのよ」
「……そんな、どうして…」
私が、どんな気持ちで会社を辞めて高貴とも別れたのかと思うと言葉が続かない。
「お母さんもよくわからないけど…お父さんは会社を辞めるのが早まっただけだからと言って……今は、蒼さんと毎日忙しそうに朝から夜遅くまで何かしているようだけど、会社勤めしている時より2人とも生き生きしているわ」
うふふと笑う母。
私のしたことは一体何だったのだろう…
そんな私の心の中を読んだように
「麗奈の気持ちはお父さんにちゃんと届いているから…あなたは赤ちゃんを産むことだけを考えなさい。だからね、麗奈‥家に戻って来なさい」
「……」
「麗奈、家に戻った方がいいと思う。麗奈の気持ちもわかるけど…やっぱり1人でなんて無理だよ」
「そうよ。お母さんの楽しみ奪わないで…おばあちゃんになるの楽しみにしてたんだから」
私の不安を拭うように、あっけらかんと笑う母につられて一緒に3人で笑っていた。
「あっ、お父さんに連絡しなくっちゃ…心配してるのよ。本当はすぐにでも駆けつけたいみたいなんだけど、今はどうしても抜け出せないみたいで‥…麗奈の為にどんなことをしても成功してみせるって言ってのよ…一体、何をするつもりなのかしら」
そう言って病室から出て行く母。
「……専務と蒼さん、会社を作るの」
ボソッとつぶやく優香。
「えっ…会社?」
「蒼さんも詳しく教えてくれないんだけど、近々立ち上げるらしいの」
「……そうなんだ」
「それでね、叔母さまいらしたから言いにくかったんだけど、俺がいたら麗奈も安心できないだろうからって家を出るつもりらしいの。だから、麗奈は安心して帰って大丈夫よ」