嘘から始まる恋だった

高貴も一緒に頭を下げるので、私も一緒に頭を下げていた。

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「やりおったな…お前の好きにするがいい。今後、ワシからの援護はないからの」

会長は高貴に捨てゼリフを吐いて壇上を降りていった後ろ姿に高貴はただ頭を下げるだけだった。

その後、パーティーは何事もなかったかのように始まり賑わっている。

私は、高貴に連れられホテルの1室にいる。

スイートルームなのか、広い室内に戸惑いどこにいればいいのかわからない。

背後にいる高貴にも戸惑い、何を話していいのかもわからないから離れるようにウロウロしだす始末だ。

窓から見える綺麗なネオンにため息が漏れ、ガラスに映る高貴にときめいて頬が熱くなる。

一歩一歩と近づく男から逃げるように

「このドアなんだろう?」

と声を出し開ければ、そこには何人も寝れそうな広いベッドが中央にある。

なぜか恥ずかしくなり、見なかった事にしようとそっとドアを閉めようとしたのに閉まらないドア。

えっ…

見上げれば男の手がドアを押さえていた。

「何をいまさら恥ずかしがっているの?」

背後からクスクスと笑う男に頬を染めれば、頬にチュッとキスが落ちてぎゅっと抱きしめてくる手が嬉しい。

そっと手を上から添えれば…

「抱きしめにくいからこっち向いてよ」

耳元で久しぶりに聞く甘い声にきゅんと心が高鳴ると、緩んだ腕の中をゆっくりと体ごと振り向く。

頬を両手で挟み嬉しそうに笑う高貴。

「……麗奈……もう、どこにも行くな」

「うん…」

コツンとおでこ同士を合わせて見つめ合う2人。

「……愛してるよ」

「私も…愛してる」

引き合うようにお互いの唇が重なる。

久しぶりの温もりは、私を蕩けさせていく。

何度もお互いを確かめ合うキス。

時折、頬をすり寄せたり鼻先をすり寄せ
てお互いの存在を確かめ合う私達。

どれだけそうしていたのだろう?

気づけば、帯紐が解かれ結んである帯を引きずってベッドサイドまで来ていた。

高貴の手は、ためらうことなく一つ一つ解いていく。

「……私、着物着れないよ」

「うん…でも、きついだろう⁈服は用意してもらってあるから脱いでしまおう」

そう言って脱がされ襦袢だけになってしまった私のお腹に手を添える高貴の手のひら。

「ここにいるんだな⁈」

「うん…私達の赤ちゃん」

床に膝をついて頬ずりする高貴に笑えてしまった。

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