そのキスで教えてほしい
「つづき、何?」

戻っていくハンドルを手の中で撫でながらそう言った崎坂さんの声は、面白がっているように感じた。
だから恥ずかしくなって、目元がじんじんと熱くなってくる。

黙っていたら「もうすぐ?」と声をかけられ、はっとした私は返事をした。
自分のマンションに車が近づいている。

数メートル手前で「そこの建物です」と言うと、車はゆっくりと脇に停まった。

「ありがとうございました……」

「いいよ。近いし」

穏やかな口調にどうしようもなく心を揺さぶられるのは、何故だろう。

息を吸って、吐く。その吐息は熱い気がする。

「……あれはキス、でしょうか」

二人きりの空間に響いた私の声は、ちょっとだけ震えていた。
羞恥で赤くなってしまっているだろう頬を隠すように俯くと、そっと視界に手が映った。

「どう思う?」

崎坂さんの指が頬に触れて、彼の方へ顔を向かされる。

「俺にしたらあんなの、キスじゃないけど。まあ、唇は触れたよな」

崎坂さんの表情があまりにも蠱惑で……見惚れてしまった。
いたずらな笑みを浮かべている彼の視線が、私の口許へ移る。
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