そのキスで教えてほしい
***


部屋に帰ってどうにかして崎坂さんのことを考えないようにアプリゲームをしたり、テレビを見たり、雑誌を見たりしたけれど、浮かんでくるのは彼のことばかり。

頭の中から追いやろうとすればするほど『可愛い』とさりげなく言われたことを思い出して赤面してしまう。

すっぴんを見られて恥ずかしいって気持ちがあるのに。

気づいたらソファーに置いてあるクッションを叩いてバタバタしていた。


結局、疲れた休日だった。

何をやっているんだろう、私。
崎坂さんのことを考えたってしょうがないのに。

週が明けて今日からまた五連勤。
自宅を出るとき玄関で大きく深呼吸をし、落ち着けと自分に言い聞かせてから出勤した。

オフィスでは崎坂さんと顔を合わせる。デスク、隣だし。変に避けたりもできないのだから、自分で気持ちをコントロールするしかない。

会社は自宅からバスで十五分。
電車でも通えるけれど、自宅のそばにバス停があるから楽かなと思い、バスで通っている。
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