そのキスで教えてほしい
確かに、外見に気を使っていて、仕草も女性らしいし、女の私から見ても可愛い人だなと思う。

木村さんの姿を頭に浮かべていたら、湖島さんがひょこっと顔をだすようにして私を見た。

「ちょうどいい。崎坂と君と木村さんと俺で!」

「え?」

君っていうのは私のこと? ぱちぱちと瞬きをしていると、崎坂さんが顔をこちらに向けて柔らかく口許を緩めた。

そして湖島さんに視線を戻す。

「いいよ。飲みに行っても」

「よっしゃー! じゃあ俺、今日の昼休みに木村さんを誘ってみるから!」

瞳を輝かせて張り切った声をだした湖島さんは、階段を上る足を速めて一人抜き出る。

「んじゃ、よろしく!」

そして振り返えり、満面の笑みを見せながら右手を振って行ってしまう。

あまりにも軽快だったから引き止めるタイミングがなかった。

「あの、私も行くんですか?」

隣の崎坂さんにそう訊ねたとき、商品販売部がある五階にたどり着いた。
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