そのキスで教えてほしい
「そうみたい。なんで、嫌?」

「いいえ、嫌ではないですけど」

ただ、私は湖島さんと親しいわけでもないし、木村さんとだって同じ課でも飲みにいったりしたことがない。
そこに崎坂さんもいるわけだから、変な緊張をしてしまう。

だから、行かなくていいなら避けたいだけ。

「湖島のやつ、木村さんに気があるみたいだし。俺は同期で親しくしている仲として、付き合ってやろうと思ってるんだけど。そこに鈴沢がいたら俺的に楽しめる」

瞳を伏せて微笑んだ崎坂さんにどきっとしてしまった。

楽しめるって何。
またからかえるってことだろうか。

「そうですか」

何ともない感じで笑みを作り答えると、崎坂さんの視線がこちらに向いた。

「鈴沢、ずっと受け答えに妙な距離があるよな。それじゃ意識してますって俺に伝えてるようなもんだよ。平然なフリ、もう少し上手くできるといいな」

「なっ……」

ふっと笑った崎坂さんは私から離れると、先に部署の中へと入っていき、周りに挨拶をしていった。

私は頬の熱が恥ずかしくて仕方なくて、唇を強く結んでその姿を見ていた。
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