そのキスで教えてほしい
私は勢いよく頭を下げて謝った。

「先週の崎坂さんと木村さんのこと、誤解していました。木村さんがふらついて、それを崎坂さんは支えただけだったのに抱き合ってたとか思ってしまって……」

「ああ……木村から聞いたの？」

「いえ、聞いたというか、木村さんが人に話しているのを偶然聞いてしまったんですけど」

「そう」

「……あの、本当にすみませんでした」

崎坂さんの足元を見つめながら、私はもう一度謝った。
一方的に彼を非難して、それが誤解だったなんて本当に悪いことをしたと思う。

「鈴沢、あの時俺にかなりキツいこと言ってくれたよな」

穏やかなのにどこか剣呑な崎坂さんの声色。
私は恐る恐る顔を上げた。

「最低、だっけ？」

「すみません……」

「しかもその後ずっと避けられたし」

崎坂さんは目を細め、口許を緩める。
急にスイッチが入って色っぽさの出たその表情に、私の鼓動が一気に騒ぎだした。

普段は見せない彼の蠱惑な一面。それに心を奪われてしまいそう。

「で、でも、どうして誤解だって言ってくれなかったんですか」

胸の高鳴りに負けたくなくて正面切って訊ねた私に、崎坂さんは距離を奪うように近づいてきた。
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